銀行評価を上げる10の施策 ― 信用格付・債務者区分 改善統合システム

31問ヒアリング(面談しながらタップ)

回答に応じて10施策の適合度と定性評価を自動判定
結果

施策別の適合度

100点満点
定性

定性評価(金融機関の非財務評価に相当する15項目)

格付の加減点として反映

信用格付は、決算数値による定量評価を基礎としつつ、経営者の資質、事業の将来性、情報開示の姿勢、取引状況等の定性面を加味して最終的に決定されます。定量評価は決算後にしか動かせませんが、定性評価は今日から動かせます。

書面

金融機関に提出できる資料の整備状況(15項目)

未整備は提案書とロードマップに自動反映
AI

決算書PDFの自動読取

添付するだけで読み取れる項目は自動入力されます

決算書(貸借対照表・損益計算書)/勘定科目内訳明細書/借入金一覧表・返済予定表/保険の解約返戻金証明書などのPDFまたは写真を添付し、「読み取り開始」を押してください。3期分の決算書があれば趨勢分析まで自動で埋まります。読み取れた欄は、確認・手入力が必要な欄は黄色で表示されます。

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お客様情報

黄色欄=入力可/金額の単位はすべて万円
会社名 代表者名
業種 決算月
業歴/従業員数 年 / 法人の実効税率
現在の格付(判明している場合) 目標とする格付
事務所名/担当者
担当者の一言
B/S

直近決算の貸借対照表(単位:万円)

資産の部負債・純資産の部
現金及び預金 買掛金・支払手形
売掛金・受取手形 短期借入金(1年内返済含む)
棚卸資産 その他の流動負債
その他の流動資産 長期借入金
土地 役員借入金
建物・構築物 その他の固定負債
機械・車両・器具備品 資本金
保険積立金 利益剰余金等(差額)
投資有価証券 純資産合計
ゴルフ会員権等 負債・純資産合計
役員貸付金・仮払金 自己資本比率(表面)
繰延資産・その他固定資産 有利子負債合計
資産合計負債合計
P/L

損益の状況(3期分・単位:万円)

成長性の評価と趨勢分析に使用
項目前々期前期直近期
売上高
売上総利益
営業利益
経常利益
当期純利益
減価償却費
支払利息
総資産
純資産
有利子負債
年間の借入元金返済額 万円 繰越欠損金 万円
変動費率 役員報酬(年額・代表者) 万円
実態

実態貸借対照表への修正項目

含み益は開示しなければ評価に反映されません
マイナス項目(開示の有無にかかわらず金融機関は控除します)
役員貸付金・仮払金の資産性 回収不能見込の売掛金 万円
滞留在庫の評価減額 万円 減価償却の不足額 万円
繰延資産等のうち資産性のない額 万円 退職給付債務の未計上額 万円
関係会社株式・貸付金の評価減 万円 簿外債務 万円
プラス項目(開示してはじめて評価に反映されます)
土地の時価(総額) 万円 保険の解約返戻金(総額) 万円
投資有価証券の時価 万円 ゴルフ会員権等の時価 万円
建物の含み損益 万円 その他の修正(+/−) 万円

含み損は金融機関が保守的に自ら見積もって控除しますが、含み益は資料を提示しなければ評価されません。この非対称性が、実態貸借対照表を開示すべき最大の理由です。

取引

取引金融機関の状況(単位:万円)

⑥取引金融機関分析に反映
金融機関名区分借入残高うち保証協会付金利(%)担保評価額年間返済額
信用保証協会の保証限度枠(無担保) 万円 当座貸越枠(設定額) 万円
代表者の個人資産(不動産・金融資産) 万円 経営者保証の有無
施策1

実態貸借対照表の作成と開示

含み益の開示
役員借入金の資本性認定
開示する含み益の合計(自動) 開示の方法

含み損は金融機関が自ら控除しますが、含み益は資料の提示がなければ評価されません。費用をかけずに実質自己資本を厚く見せられる、最も効率のよい施策です。

施策2

決算書の科目整理(不良資産の解消)

役員貸付金・仮払金の解消額 万円 解消の方法
不良債権の貸倒処理額 万円 滞留在庫の処分額 万円
在庫処分による回収率 雑勘定(仮払金等)の整理額 万円

金融機関は決算書本体より先に勘定科目内訳明細書を読みます。役員貸付金・仮払金・長期滞留債権は、そこで真っ先に目に留まる科目です。

施策3

収益力の改善(償却前営業利益の確保)

限界利益率の改善 pt 固定費の削減(年額) 万円
不採算取引の整理(売上の減少) 万円 その取引の限界利益率
役員報酬の適正化(減額分) 万円 改善策の区分

格付の配点では、収益性そのものより「償却前営業利益が黒字か」「債務償還年数が何年か」という返済能力の比重が大きくなります。利益の絶対額よりも、返済原資としての安定性が問われます。

施策4

債務償還年数の短縮(有利子負債の圧縮)

遊休資産の売却額/簿価 万円 対象資産
金融資産の処分額/簿価 万円 対象
余剰現預金からの繰上返済額 万円 売却代金の返済充当率

債務償還年数は返済能力の配点のなかで最も比重が大きい指標です。分子(有利子負債−現預金)を減らすか、分母(簡易キャッシュフロー)を増やすかの二択になります。

施策5

借入構成の最適化(運転資金と設備資金の峻別)

短期継続融資(当座貸越等)への振替額 万円 設定する枠の種類
証書貸付の返済期間の延長 年 → 対象となる証書貸付の残高 万円
金利の見直し % → 設備資金の期間の適正化

所要運転資金は、本来は分割返済のない短期継続融資で調達すべき資金です。これを毎月返済のある証書貸付で賄うと、返済のために新たな借入を要する構造になり、債務償還年数が悪化します。

施策6

取引金融機関構成の見直し

メイン行の目標シェア 取引行数の見直し 行 →
プロパー資金への切替額 万円 切替による金利の変化 pt 上昇
保証料の削減(年額・自動) 新規取引先の開拓

保証協会付きの借入ばかりでは、金融機関は自らの信用リスクを取っていないため、企業を深く見る動機が生まれません。プロパー資金の比率は、金融機関からの評価そのものを映す指標です。

施策7

保全の見直しと過剰担保の解放

解放を求める担保の評価額 万円 担保の種類
保証協会枠の温存目標 万円 根抵当権の極度額の見直し
代表者名義の担保提供資産 万円 解放の優先順位

担保は一度差し入れると、借入が減っても自動では戻りません。過剰担保の状態は、他行からの新規調達の余地を狭め、結果として交渉力を弱めます。

施策8

資本の増強(増資・資本性劣後ローン)

増資額 万円 資本準備金への組入率
役員借入金の資本振替額(DES) 万円 引受人
資本性劣後ローンへの転換額 万円 期間/当初金利 年 /
従前の借入金利(DDS対象分) 年間の内部留保額 万円

資本性劣後ローンは、契約上は借入金でありながら査定上は自己資本とみなされます。自己資本比率と債務償還年数の双方に同時に効くため、格付への影響が最も大きい施策です。

施策9

経営改善計画の策定とモニタリング

計画期間 計画の水準
売上高の年成長率/固定費削減(年) % / 万円 設備投資(年額) 万円
報告の頻度 外部専門家の関与

計画の存在そのものが定性評価の加点要素です。加えて、実現可能性の高い計画があると認められる場合には、債務者区分の判定において有利に取り扱われる余地があります。

施策10

定性評価の引上げ(情報開示と経営体制)

月次決算の早期化 試算表の提出
決算報告の面談 後継者の明確化
法人と個人の資金の分離 事業計画・経営方針の文書化

定量評価は決算後にしか動かせませんが、定性評価は今日から動かせます。とりわけ情報開示の姿勢は、金融機関が最も重く見る項目のひとつです。

信用格付・債務者区分の評価と見通し

1.格付の決まり方

金融機関の信用格付は、決算書の数値による定量評価を基礎とし、経営者の資質・事業の将来性・情報開示の姿勢等の定性評価を加減して算定されます。さらに、実態貸借対照表への修正、債務者区分の判定、保全状況の確認という過程を経て、最終的な与信判断に至ります。

配点・区分は金融機関ごとに異なります。本書は一般に用いられる指標群に基づく簡易モデルによる試算です。

2.実態貸借対照表への修正

検算 ― 修正額の合計と実態純資産の差額
Ⓐ 決算純資産+修正合計/Ⓑ 実態純資産

3.定量評価(12指標・100点)

4.定性評価(15項目・±10点)

5.格付の判定

現状
10施策の実行後

6.債務者区分の判定

債務者区分は、業況・財務内容・返済能力に基づき、正常先/要注意先(うち要管理先)/破綻懸念先/実質破綻先/破綻先に区分されます。実質債務超過であっても、解消年数が概ね5年以内であり、かつ実現可能性の高い経営改善計画があると認められる場合には、上位の区分として取り扱われる余地があります。

7.格付が上がると何が変わるか

金利水準・調達余力は、金融機関の資金調達コスト、担保・保証の状況、取引実績等により個別に決まります。上表は一般的な傾向を示す目安です。

10の施策による格付スコアの改善
格付の目安
実質自己資本比率
債務償還年数
定性評価
調達余力
万円(目安)
序列

効果の内訳(施策別・格付スコアへの寄与が大きい順)

定量評価に効く施策と定性評価に効く施策があります。定量は決算を経て反映されますが、定性は着手した時点から評価に反映されます。

配点

評価項目別の得点(実行前後)

実行後実行前
指標

主要な財務指標の変化

優先

着手の優先順位と面談トーク

カード下段はそのままお伝えいただける一言です
推移

格付スコアの推移見通し(5年)

施策実行後現状のまま
感応

感応度分析(経常利益が変動した場合)

計画未達時に格付がどう変化するかを示しています。金融機関との協議では、下振れ時の耐性を説明できることが信頼につながります。

目標格付からの逆算

1.目標到達までの距離

2.指標ごとの到達水準(あと何点取れるか)

「次の配点に必要な水準」は、その指標で1段階上の得点を得るために必要な値です。現状の値からの距離が小さい項目ほど、少ない努力で得点が上がります。

3.必要な数値の逆算

各行は、他の条件を一定として、その項目だけで目標水準に到達するために必要な金額を示しています。実際には複数を組み合わせることになります。

4.改善の効率(1点あたりの負担)

5.到達までの道筋

累積スコア目標スコア
取引金融機関の状況と構成の見直し

1.取引金融機関別の明細

検算 ― 取引金融機関の残高合計と貸借対照表の有利子負債
Ⓐ 金融機関別残高の合計/Ⓑ 短期借入金+長期借入金

2.シェアと調達構造

3.プロパー比率と保証協会枠

信用保証協会の保証は、無担保保証と有担保保証で限度額が定められています。枠を使い切った状態では、不測の資金需要に対応する余地がなくなります。

4.金利の状況

金利は格付・保全・取引実績により決まります。格付の改善は、調達の可否だけでなく金利水準にも影響します。

5.構成の見直し方針

保全状況の整理と経営者保証の見直し

1.保全の状況

担保による保全信用保証協会による保全信用部分(プロパー与信)

2.過剰担保の有無

根抵当権の極度額は、借入残高が減っても自動では下がりません。担保余力が他行への担保提供に使えない状態が続くと、調達の選択肢が狭まります。

3.経営者保証に関するガイドラインの3要件

経営者保証に関するガイドラインは法的な拘束力を持つものではありませんが、金融機関は自主的に尊重・遵守することが期待されています。3要件の充足状況は、保証の解除・非徴求を求める際の実務上の判断材料となります。

4.要件充足に向けた具体策

5.保証解除を申し入れる際の進め方

事業性評価に向けた自社の整理

1.財務指標による現状把握(6指標)

貴社業種の目安

6つの指標は、売上持続性・収益性・生産性・健全性・効率性・安全性の各側面を代表するものとして一般に用いられます。

2.事業を説明するための4つの視点

決算書に表れない強みを言語化することが、事業性評価に基づく融資を受けるための出発点になります。空欄は面談前にご記入ください。

3.商流・業務フローの整理

4.非財務情報の棚卸

5.金融機関に伝えるべき論点の整理

様式 BK-10 / 整理番号 ―
信用格付 十施策 効果額計算書(連結)
別表一
実態貸借対照表の作成と開示
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表二
決算書の科目整理(不良資産の解消)
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表三
収益力の改善(償却前営業利益の確保)
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表四
債務償還年数の短縮(有利子負債の圧縮)
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表五
借入構成の最適化
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表六
取引金融機関構成の見直し
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表七
保全の見直しと過剰担保の解放
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表八
資本の増強
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表九
経営改善計画の策定とモニタリング
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表十
定性評価の引上げ
 
検算 ― 資産の増減合計と負債純資産の増減合計
Ⓐ 資産増減/Ⓑ 負債・純資産増減
別表十一
施策実行後の貸借対照表(勘定科目別の増減)
検算 ― 実行後BSの貸借一致
Ⓐ 資産合計/Ⓑ 負債・純資産合計
別表十二
実態貸借対照表への修正明細(開示前・開示後)
別表十三
財務指標一覧(22指標)
別表十四
定量評価スコアの算定
検算 ― 配点の合計
Ⓐ 各項目の配点合計/Ⓑ 100点
別表十五
定性評価の内訳
検算 ― 配点の合計
Ⓐ 各項目の配点合計/Ⓑ 100点
別表十六
格付・債務者区分の判定過程
別表十七
目標格付からの逆算
別表十八
取引金融機関別の残高・保全・金利
検算 ― 残高の合計
Ⓐ 金融機関別合計/Ⓑ 有利子負債
別表十九
保全状況と信用部分の分解
検算 ― 保全額と信用部分の合計
Ⓐ 保全+信用/Ⓑ 有利子負債
別表二十
損益への影響(平年ベースと初年度特別損益)
別表二十一
5ヶ年の格付推移見通し
別表二十二
業種別ベンチマークとの対比

代表取締役 

担当:
銀行評価を上げる
10の施策のご提案

1.ご提案の全体像

格付スコア
格付の目安
実質自己資本比率
債務償還年数

2.格付はどのように決まるか

金融機関は、決算書をそのまま受け取るのではなく、資産の実在性と時価を確かめて純資産を計算し直したうえで、安全性・収益性・返済能力・成長性の各指標を採点します。ここに経営者の資質や情報開示の姿勢といった定性面の評価を加減して、信用格付が決まります。

重要なのは、この過程の多くが企業側からは見えないことです。含み益のある資産や、返済を求めていない役員借入金は、こちらから資料を示さなければ評価に反映されません。逆に、含み損や回収の見込みがない債権は、金融機関が保守的に自ら控除します。この非対称性を踏まえ、伝えるべきことを伝えることが第一歩になります。

3.現状の見立て

取引金融機関の状況

保全と経営者保証

4.実態貸借対照表の作成と開示

5.決算書の科目整理

6.収益力の改善

7.債務償還年数の短縮

8.借入構成の最適化

9.取引金融機関構成の見直し

10.保全の見直しと過剰担保の解放

11.資本の増強

12.経営改善計画の策定とモニタリング

13.定性評価の引上げ

14.目標格付までの道筋

15.格付が上がることの意味

16.進め方(優先順位)

月別の詳細は別紙「実行ロードマップ」のとおりです。定性面の施策は今月からでも着手できます。

17.整備が必要な資料

18.実行時の留意点

□ 実態貸借対照表の開示は、含み益の裏付資料(解約返戻金額証明書・査定書・残高報告書)を必ず添える
□ 役員借入金の資本性を主張する場合、返済を求めない旨の確認書を提出し、実際に返済を行わない
□ 貸倒損失・評価損は、法人税基本通達の区分に応じた証憑を保存する
□ 遊休資産の売却が同族関係者に対するものである場合、時価の根拠資料を必ず備える
□ 短期継続融資への振替は、所要運転資金の範囲内で行い、資金使途を明確にする
□ プロパー資金への切替は金利が上がる場合がある。保証料と金利の総額で比較する
□ 保証協会の枠を使い切らないよう、借換時に枠の残高を確認する
□ 担保の解放は、借入残高が十分に減少した段階で、資料を添えて申し入れる
□ 資本性劣後ローンは全取引金融機関の理解が前提となる。メイン行との事前協議から始める
□ 増資は資本金1億円超とならないよう資本準備金への組入れを検討する
□ 経営改善計画は、策定より進捗の報告が重要。四半期ごとの報告を継続する
□ 月次試算表は、金額の正確性より提出の継続性が評価される

19.担当者所見

本書は設例を含む概算試算に基づくご提案であり、個別の税務判断を行うものではありません。信用格付・債務者区分は各金融機関の内部基準により決定されるため、本書の試算と実際の評価は異なります。

金融機関との面談 進行と想定問答

1.決算報告面談の進行(30分の組み立て)

2.持参する資料

3.想定問答

4.こちらから確認すべきこと

5.面談後の対応

解説

10施策の実務ライブラリ

見出しをタップすると開きます

各施策について、概要・格付への効果・実務上の取扱い・実行手順・必要書類・留意点・面談トークを整理しています。記載は一般的な取扱いの整理であり、個別の事案については必ず事実関係を確認のうえ判断してください。

施策1実態貸借対照表の作成と開示
概要

決算書の資産について、回収可能性と時価を評価し直した貸借対照表を自ら作成し、金融機関に提示する施策です。金融機関は独自に実態評価を行いますが、その過程は企業側からは見えず、含み益のように資料がなければ把握できない項目は評価に反映されません。

格付への効果

費用をほとんど要さずに実質自己資本を厚く評価してもらえる、最も効率のよい施策です。とりわけ保険積立金の解約返戻金は決算書に一切現れないため、証明書を提示するだけで実態純資産が大きく変わることがあります。また、代表者からの借入金について返済を求めない旨を明らかにすれば、実質的な自己資本として評価される余地が生まれます。評価の非対称性(含み損は金融機関が自ら控除するが、含み益は提示しなければ評価されない)を踏まえると、開示しないことは一方的に不利な状態を放置していることになります。

実務上の取扱い
  • 金融機関の実態評価では、役員貸付金・仮払金は原則として全額が資産から控除されます。回収可能性を主張する場合は、金銭消費貸借契約書と返済実績が必要です。
  • 土地・建物の含み益は、路線価・公示価格・取引事例に基づく査定書または不動産鑑定評価書により裏付けます。金融機関は担保評価の観点から、時価の70%程度で見ることが一般的です。
  • 保険積立金は、保険会社が発行する解約返戻金額証明書により証します。契約時期により資産計上ルールが異なるため、証券ごとに簿価と返戻金を対比した一覧表を作成します。
  • 役員借入金の資本性は、返済を求めない旨の確認書(代表者名義)を提出することで主張します。ただし、実際に返済を行うと主張と矛盾するため、資金移動には注意が必要です。
実行手順
  • 勘定科目内訳明細書をもとに、修正が必要な科目を洗い出す
  • マイナス項目(回収不能債権・滞留在庫・償却不足・簿外債務)を保守的に見積もる
  • プラス項目(保険・有価証券・不動産・会員権)の時価資料を取得する
  • 修正後の実態純資産と実質自己資本を算定する
  • 一覧表と裏付資料を綴じた説明資料を作成する
  • 決算報告の面談で経営者から直接説明する
必要書類・資料
  • 実態貸借対照表(修正項目・金額・根拠を一覧化したもの)
  • 解約返戻金額証明書(保険会社発行)
  • 証券会社の残高報告書
  • 不動産の査定書または鑑定評価書
  • ゴルフ会員権等の相場資料
  • 役員借入金について返済を求めない旨の確認書
  • 勘定科目内訳明細書
留意点・リスク
  • マイナス項目を隠すと、後に発覚した際に情報開示の姿勢そのものが疑われ、定性評価に重大な影響を及ぼします。不利な情報こそ先に開示します。
  • 時価の根拠が主観的なものにとどまると、評価に反映されません。第三者が作成した資料を用います。
  • 役員借入金を資本性のあるものとして主張しながら実際に返済すると、主張の信頼性が失われます。
  • 一度提示した実態貸借対照表は、翌期以降も継続して更新する必要があります。単発の資料は評価されにくいところです。
面談トーク
銀行は決算書の数字をそのまま見ているわけではありません。保険の解約返戻金のように、決算書に出てこない資産は、こちらから資料をお出ししない限り評価されないのです。お金は一切かかりませんので、まずここから始めましょう。
施策2決算書の科目整理(不良資産の解消)
概要

役員貸付金・仮払金、回収の見込がない売掛金、長期滞留在庫といった、金融機関の評価上ほぼ価値が認められない資産を整理し、決算書から落とす施策です。

格付への効果

金融機関は決算書本体より先に勘定科目内訳明細書を読みます。役員貸付金・仮払金・長期滞留債権は、そこで真っ先に目に留まる科目であり、その存在自体が「法人と個人の資金が分離されていない」「管理が行き届いていない」という定性面の減点にもつながります。実態評価では既に控除されているため、処理を行っても実質自己資本は減らず、むしろ損金算入による節税分だけ改善します。決算書の見え方と定性評価の双方に効く施策です。

実務上の取扱い
  • 貸倒損失は、法律上の貸倒れ(法基通9-6-1)、事実上の貸倒れ(法基通9-6-2)、形式上の貸倒れ(法基通9-6-3)のいずれかに該当する必要があります。区分ごとに要件と証憑が異なります。
  • 棚卸資産の評価損は、災害・著しい陳腐化・破損等の限定列挙に該当する場合に限られます(法令68①一)。単なる時価下落では認められないため、廃棄処理の方が立証は容易です。
  • 役員貸付金を退職金と相殺する場合、退職の事実と役員退職慰労金規程・株主総会議事録が前提となります。
  • 役員貸付金に係る認定利息の計上漏れは税務調査の重点項目です。解消までの間も適正利率による利息を計上します。
実行手順
  • 勘定科目内訳明細書から不良資産を特定する
  • 売掛金の年齢表と在庫の滞留リストを作成する
  • 税務上の処理区分を判定し、必要な証憑を収集する
  • 役員貸付金の解消方法を決定する
  • 稟議書により社内決裁を得て、期末までに処理を完了する
  • 処理後の勘定科目内訳明細書を金融機関に提示する
必要書類・資料
  • 売掛金年齢表
  • 棚卸資産の滞留リスト
  • 催告書(内容証明郵便)と配達証明
  • 登記事項証明書・破産手続開始決定通知書
  • 廃棄証明書・産業廃棄物管理票・処分前後の写真
  • 金銭消費貸借契約書と返済計画書
  • 役員退職慰労金規程と株主総会議事録
留意点・リスク
  • 廃棄の事実を証明できないと、簿外流出を疑われ損金否認となるおそれがあります。
  • 期末直前の大量処理は税務調査で重点的に確認されます。処理の必要性と時期の合理性を稟議書に残します。
  • 損失計上により決算書上の純資産は減少します。実態では改善することを、実態貸借対照表とあわせて説明する必要があります。
  • 役員貸付金の解消を退職金で行う場合、退職給与の適正額を超える部分は損金不算入となります。
面談トーク
銀行は決算書より先に、勘定科目の内訳明細書を見ています。役員貸付金や何年も動いていない売掛金は、そこで真っ先に目につく科目です。処理をすると純資産は一時的に減りますが、銀行の評価はむしろ上がります。
施策3収益力の改善(償却前営業利益の確保)
概要

限界利益率の改善、固定費の削減、不採算取引の整理により、償却前営業利益と経常利益を安定的に確保する施策です。

格付への効果

格付の配点では、収益性そのものより「償却前営業利益が黒字であるか」「債務償還年数が何年か」という返済能力の比重が大きくなります。利益の絶対額よりも、返済原資としての安定性が問われます。簡易キャッシュフローが増えれば債務償還年数の分母が大きくなり、返済能力の配点が直接改善します。あわせてインタレスト・カバレッジ・レシオも改善します。

実務上の取扱い
  • 簡易キャッシュフローは、経常利益×(1−実効税率)+減価償却費で算定されるのが一般的です。減価償却費が返済原資に含まれるため、償却を適正に行っている企業ほど返済能力は高く評価されます。
  • 減価償却を停止して利益を捻出しても、金融機関は償却不足額を実態評価で控除するため、評価は上がりません。
  • 不採算取引の整理は、売上高が減少するため成長性の配点にはマイナスに働きますが、限界利益率と収益性の改善が上回れば総合では改善します。
  • 役員報酬の減額は利益を増やしますが、金融機関は役員報酬を加味した実質的な収益力も見ています。過度な減額は説明を要します。
実行手順
  • 取引先別・製品別の限界利益を算定する
  • 限界利益率が著しく低い取引を特定し、値上げ交渉または撤退を判断する
  • 固定費を変動費・準変動費に分解し、削減余地を洗い出す
  • 損益分岐点売上高と経営安全率を算定する
  • 月次で限界利益率の推移を管理する
  • 改善の内容と数値を金融機関に説明する
必要書類・資料
  • 取引先別・製品別の限界利益一覧
  • 損益分岐点分析表
  • 固定費の内訳と削減計画
  • 月次の限界利益率推移表
  • 値上げ交渉の記録
  • 撤退・整理した取引の一覧
留意点・リスク
  • 売上高の減少は成長性の配点に影響します。撤退の理由と、残った取引の収益性を説明できるようにします。
  • 一時的な経費削減による利益は持続性が疑われます。構造的な改善であることを示す必要があります。
  • 減価償却の停止による利益捻出は、実態評価で修正されるうえ、情報開示の姿勢に対する疑念を招きます。
面談トーク
銀行が見ているのは利益の額そのものより、返済に回せるお金がいくらあるかです。減価償却費を足し戻した簡易キャッシュフローが返済原資と見なされますので、償却をきちんと行ったうえで利益を出すことが評価につながります。
施策4債務償還年数の短縮(有利子負債の圧縮)
概要

遊休資産・金融資産の処分と余剰現預金による繰上返済により、有利子負債を圧縮し、債務償還年数を短縮する施策です。

格付への効果

債務償還年数は、返済能力の配点のなかで最も比重が大きい指標です。(有利子負債−現預金)÷簡易キャッシュフローで算定されるため、分子を減らすか分母を増やすかの二択になります。資産の売却は分子を直接減らすうえ、総資産が圧縮されるため自己資本比率と総資本回転率も同時に改善します。10年を超えているか否かが一つの分岐点とされることが多く、この線を越えられるかどうかが格付を左右します。

実務上の取扱い
  • 債務償還年数の算定において、現預金を控除するかどうか、役員借入金を有利子負債に含めるかどうかは金融機関により異なります。控除しない前提でも10年以内となる水準を目指すのが安全です。
  • 売却損が生じる資産は、利益の出ている期に処分することで節税効果が最大になります。
  • 同族関係者への譲渡は、時価の立証が必須です。鑑定評価書または複数社の査定書を取得します。
  • 担保に供されている資産の売却には金融機関の同意が必要です。事前協議を怠ると決済ができません。
実行手順
  • 固定資産台帳と現物を照合し、遊休資産を特定する
  • 各資産の時価を調査する
  • 維持コストと売却効果を比較する
  • 担保設定の有無を確認し、金融機関と担保解除を協議する
  • 取締役会で決議し、売買契約を締結する
  • 売却代金を借入金の返済に充当する
必要書類・資料
  • 固定資産台帳と実査記録
  • 査定書・鑑定評価書
  • 取締役会議事録
  • 売買契約書
  • 担保解除に関する金融機関との合意書
  • 繰上返済の計算書
留意点・リスク
  • 繰上返済により手元資金が薄くなると、資金繰りに支障をきたします。月商1ヶ月分以上の現預金は残します。
  • 事業に必要な資産まで売却すると、収益力そのものを損ないます。真に遊休であることの確認が前提です。
  • 繰上返済を行うと、その金融機関の与信残高が減り、取引シェアが変動します。どの借入から返済するかは戦略的に判断します。
面談トーク
債務償還年数は、銀行の採点のなかで最も配点が大きい項目です。10年を超えているかどうかが一つの分かれ目になりますので、使っていない資産を売って借入を返すだけで、評価は大きく変わります。
施策5借入構成の最適化
概要

所要運転資金を短期継続融資(当座貸越・手形貸付の反復)で調達し、設備資金は耐用年数に見合う期間の証書貸付で調達するという、資金使途と調達手段の対応関係を整える施策です。

格付への効果

恒常的に必要な運転資金を毎月返済のある証書貸付で賄うと、返済のために新たな借入を要する構造となり、資金繰りが慢性的に逼迫します。短期継続融資に振り替えれば元金返済の負担が消え、簡易キャッシュフローに対する返済負担率が大きく改善します。あわせて資金使途と調達手段が対応していることは、資金管理ができている企業という定性評価にもつながります。

実務上の取扱い
  • 所要運転資金は、売上債権+棚卸資産−仕入債務で算定します。この範囲内であれば、短期継続融資による調達が本来の姿とされます。
  • 短期継続融資は、期日に一括返済し同額を再度実行することを繰り返す融資形態です。実質的には長期の資金供給でありながら、元金返済が発生しません。
  • 当座貸越は極度額の範囲内で自由に出し入れできるため、季節変動への対応にも適しています。
  • 設備資金の返済期間が法定耐用年数より著しく短いと、減価償却費を上回る返済が必要となり、資金繰りを圧迫します。
実行手順
  • 所要運転資金を算定し、月商倍率で妥当性を確認する
  • 現在の借入を資金使途別に分類する
  • 運転資金に相当する部分を特定する
  • 資金繰り表(実績・予定12ヶ月)を整備する
  • メイン行に短期継続融資枠の設定を申し入れる
  • 設備資金の返済期間を耐用年数に合わせて見直す
必要書類・資料
  • 所要運転資金の算定表
  • 借入金一覧表(資金使途別・条件別)
  • 資金繰り表(実績と予定12ヶ月)
  • 売上債権・棚卸資産・仕入債務の推移表
  • 設備の耐用年数と返済期間の対比表
留意点・リスク
  • 短期継続融資は、更新の都度、金融機関の判断が入ります。業績悪化時に更新されないリスクがあります。
  • 当座貸越枠は、業績が良好なうちに設定しておくことが肝要です。必要になってから申し込んでも間に合いません。
  • 運転資金の範囲を超えて短期枠を使うと、赤字補填とみなされ、評価を下げる要因になります。
面談トーク
仕入れてから代金が入るまでの間、どうしても必要になるお金があります。これは事業を続ける限り必要な資金ですから、本来は毎月返す性質のものではありません。短期の枠に切り替えるだけで、資金繰りはずいぶん楽になります。
施策6取引金融機関構成の見直し
概要

メイン行を明確にし、取引シェアを適正化し、信用保証協会付き借入からプロパー資金への切替を進めることにより、金融機関との関係を再構築する施策です。

格付への効果

保証協会付きの借入ばかりでは、金融機関は自らの信用リスクを取っていないため、企業を深く見る動機が生まれません。プロパー資金の比率は、金融機関からの評価そのものを映す指標です。またメイン行が不明確なまま多数の金融機関と少額ずつ取引していると、いざという時にどこも主体的に動かない状態を招きます。シェアを整理し、メイン行との関係を深めることが、危機時の対応力につながります。

実務上の取扱い
  • メイン行のシェアは40〜50%程度が一つの目安とされます。過度に一行に集中すると交渉力を失い、分散しすぎると誰も責任を持たなくなります。
  • 信用保証協会の保証は、無担保保証と有担保保証で限度額が定められています。枠を使い切ると、不測の資金需要に対応できません。
  • プロパー資金への切替は金利が上がる場合がありますが、保証料が不要となるため、総コストでは有利になることがあります。
  • 政府系金融機関との取引は、民間金融機関の与信判断にも一定の影響を与えます。長期・低利の資金として活用の余地があります。
実行手順
  • 金融機関別の残高・条件・保全状況を一覧化する
  • シェアと保証付比率を算定する
  • メイン行を明確に定める
  • 保証協会枠の残高を確認する
  • プロパー資金への切替をメイン行に打診する
  • 金利と保証料の総コストを比較する
必要書類・資料
  • 取引金融機関一覧(残高・金利・保証・担保・返済額)
  • シェアの推移表
  • 保証協会の保証残高と限度枠の資料
  • 金利と保証料の総額比較表
  • 各行への提出資料の記録
留意点・リスク
  • 特定の行の残高を大きく減らすと、その行との関係が切れることがあります。将来の資金需要を見据えて判断します。
  • プロパー資金は業績悪化時に回収圧力が強まる傾向があります。保証付との組み合わせを維持することも一案です。
  • 取引行を減らしすぎると、危機時の選択肢が失われます。
面談トーク
保証協会付きの借入ばかりですと、銀行は自分でリスクを取っていませんので、御社を深く見る動機が生まれません。一部でもプロパーで出してもらうことが、関係を変える第一歩になります。
施策7保全の見直しと過剰担保の解放
概要

借入残高の減少に見合わない過剰な担保の解放を求め、根抵当権の極度額を見直し、あわせて経営者保証に関するガイドラインに基づく保証の解除・非徴求を協議する施策です。

格付への効果

担保は一度差し入れると、借入が減っても自動では戻りません。過剰担保の状態は、他行からの新規調達の余地を狭め、結果として交渉力を弱めます。担保余力を回復させることは、格付そのものを上げるわけではありませんが、調達の選択肢を広げ、金利交渉の材料にもなります。経営者保証の解除は、事業承継の障害を取り除くという意味でも重要です。

実務上の取扱い
  • 経営者保証に関するガイドラインは、法人と経営者との関係の明確な区分・分離、財務基盤の強化、経営の透明性確保という3つの要件を掲げています。
  • 法人と経営者の資金の混同(役員貸付金・仮払金の存在、法人所有資産の私的利用)は、第1要件を満たさない典型例とされます。
  • 財務基盤の強化とは、内部留保が十分であること、または業績が安定しており返済能力が認められることを指します。
  • 経営の透明性確保には、資産負債の状況、事業計画、業績見通し等について、金融機関からの求めに応じて適時適切に情報開示を行うことが含まれます。
  • 根抵当権の極度額の減額は、金融機関の同意により登記により行います。
実行手順
  • 担保物件ごとの評価額と設定されている極度額を一覧化する
  • 借入残高と保全額を対比し、過剰担保となっている部分を特定する
  • 経営者保証ガイドラインの3要件について自社の充足状況を確認する
  • 未充足の要件について改善策を実行する
  • 担保解放・保証解除の申入書を作成し、根拠資料を添えて協議する
  • 合意後、登記手続と保証契約の変更を行う
必要書類・資料
  • 担保物件一覧(所在・評価額・極度額・設定順位)
  • 登記事項証明書
  • 借入金と保全の対比表
  • 経営者保証ガイドラインの3要件チェックシート
  • 法人と個人の資金分離を示す資料
  • 情報開示の実績記録
  • 担保解放・保証解除の申入書
留意点・リスク
  • 担保解放の申入れは、業績が良好な時期に行うのが基本です。悪化してからでは応じてもらえません。
  • 経営者保証の解除は、金融機関の裁量に委ねられます。ガイドラインは法的拘束力を持ちません。
  • 保証を外す代わりに金利が上乗せされる場合があります。条件を総合的に比較します。
  • 担保を外すと、当該金融機関の与信姿勢が慎重になることがあります。
面談トーク
担保は一度入れると、借入が減っても自動では戻ってきません。残高に見合わない担保が入ったままですと、他の銀行から借りる余地もなくなります。業績が良いうちに、整理を申し入れておくことが大切です。
施策8資本の増強
概要

増資、役員借入金の資本振替(DES)、既存借入の資本性劣後ローンへの転換(DDS)により、査定上の自己資本を厚くする施策です。

格付への効果

自己資本比率とギアリング比率は安全性の配点の中核であり、あわせて債務償還年数にも影響します。とりわけ資本性劣後ローンは、契約上は借入金でありながら査定上は自己資本とみなされ、かつ有利子負債から除外されるため、安全性と返済能力の両方に同時に効きます。格付への影響が最も大きい施策です。期限一括償還のため期中の元金返済負担も消えます。

実務上の取扱い
  • 資本性借入金は、償還条件が長期(原則5年超)の期限一括償還であること、業績連動型の金利設定であること、法的破綻時の劣後性が確保されていることを要件とします。
  • 資本性借入金は税務上は借入金として取り扱われ、支払利息は損金となります。資本金等の額は増えないため、中小法人向け特例や外形標準課税への影響はありません。
  • DESでは、現物出資される債権の時価評価により債務消滅益が生じる場合があります。事前の税務検討が必要です。
  • 資本金が1億円を超えると、法人税の軽減税率・交際費の定額控除・欠損金の全額控除等の中小法人特例が適用できなくなり、外形標準課税の対象となります。資本準備金への組入れで回避します。
実行手順
  • 必要な自己資本の水準を、目標格付から逆算する
  • 増資・DES・DDSの組み合わせを検討する
  • 資本性劣後ローンについてメイン行に相談する
  • 経営改善計画書を策定する
  • 全取引金融機関の理解を得る
  • 株主総会・登記・契約締結を行う
必要書類・資料
  • 経営改善計画書(数値計画・アクションプラン・モニタリング体制)
  • 実態貸借対照表と時価の根拠資料
  • 資金繰り表
  • 借入金一覧表と返済予定表
  • 取引金融機関一覧
  • 株主総会議事録
  • 資本金の額の変更登記に関する書類
  • 資本性劣後ローンの契約書
留意点・リスク
  • 資本性劣後ローンは全取引金融機関の理解が必要です。一行だけが劣後する形は成立しにくいのが実情です。
  • 期限一括償還のため、償還時期に多額の資金が必要となります。期間中に返済原資を積み上げる計画が不可欠です。
  • 制度の適用可否は金融機関の判断によります。すべての企業が利用できるわけではありません。
  • 増資は既存株主の持株比率と株価に影響します。事業承継との調整が必要です。
面談トーク
資本性劣後ローンは、契約は借入でありながら、銀行の査定では自己資本として扱われる資金です。自己資本比率と債務償還年数の両方に同時に効きますので、格付への影響が最も大きい施策になります。
施策9経営改善計画の策定とモニタリング
概要

数値計画とアクションプランからなる経営改善計画書を策定し、四半期ごとに進捗を報告し続ける施策です。

格付への効果

計画の存在そのものが定性評価の加点要素です。加えて、実現可能性の高い計画があると認められる場合には、債務者区分の判定において有利に取り扱われる余地があります。もっとも重要なのは、策定より継続的な報告です。計画と実績の差異を自ら説明できる企業は、業績が計画を下回っている局面でも信頼を維持できます。

実務上の取扱い
  • 実現可能性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)は、概ね3年以内に正常先となる計画であること等が要件とされます。
  • 合理的で実現可能性の高い経営改善計画(合実計画)は、概ね5年以内(最長10年)に正常先となる計画であること等が要件とされます。
  • 計画期間中に実質債務超過が解消され、債務償還年数が概ね10年以内となることが、正常先の水準の目安とされます。
  • 計画の前提が過度に楽観的であると、実現可能性が認められません。売上高の成長率は、過去の実績と市場環境から説明できる範囲にとどめます。
実行手順
  • 実態貸借対照表を出発点として現状を確定させる
  • 課題を特定し、施策と数値目標を対応させる
  • 5ヶ年の損益・貸借対照表・資金繰りの計画を作成する
  • 実抜計画・合実計画の要件充足を確認する
  • アクションプラン(誰が・いつまでに・何を)を作成する
  • 四半期ごとに計画対比の報告を行う
必要書類・資料
  • 経営改善計画書(数値計画5ヶ年)
  • アクションプラン(担当者・期限・数値目標)
  • 実態貸借対照表
  • 資金繰り表(実績・予定)
  • 計画対比表(四半期ごと)
  • 差異分析と対応策の記録
  • モニタリング体制の説明資料
留意点・リスク
  • 計画を作っただけで報告を怠ると、かえって評価を下げます。継続が前提です。
  • 未達が続くと計画の実現可能性が否定され、債務者区分の判定に不利に働きます。
  • 前提が楽観的すぎる計画は、その時点で信頼を失います。保守的な前提で作ることが結果的に有利です。
面談トーク
計画は作ることより、続けて報告することに意味があります。計画どおりにいかない期があっても、その理由をご自身で説明できる会社は、銀行から信頼されます。四半期ごとのご報告を一緒に続けてまいりましょう。
施策10定性評価の引上げ
概要

月次決算の早期化、試算表の定期提出、決算報告面談の実施、後継者の明確化、法人と個人の資金の分離など、決算数値以外の評価要素を引き上げる施策です。

格付への効果

定量評価は決算後にしか動かせませんが、定性評価は今日から動かせます。金融機関が最も重く見るのは情報開示の姿勢です。求められる前に出す、不利な情報も先に出す、経営者自らが説明する。この3つを実践している企業は、同じ決算内容でも評価が異なります。定性評価は最終格付に対して数段階の調整幅を持つことがあり、決して小さな要素ではありません。

実務上の取扱い
  • 月次決算を翌月10日以内に確定できる体制は、管理水準の高さを示す指標として評価されます。
  • 試算表の提出は、金額の正確性より継続性が評価されます。四半期ごとの提出を継続することが基本です。
  • 決算報告は、税理士任せにせず経営者が直接説明することが重要です。数字の背景を語れるかどうかが見られています。
  • 後継者が定まっていることは、事業の継続性の観点から重要な評価要素です。とりわけ代表者が高齢の場合、承継計画の有無が与信判断に影響します。
  • 役員貸付金・仮払金の存在は、法人と個人の資金が分離されていない証左とみなされ、定性評価と経営者保証の解除協議の双方に影響します。
実行手順
  • 月次決算の締めスケジュールを見直し、早期化する
  • 試算表・資金繰り表の提出を定例化する
  • 決算報告面談を年1回以上、経営者出席で行う
  • 後継者を定め、承継計画を文書化する
  • 役員貸付金・仮払金を解消し、資金の分離を明確にする
  • 経営方針・事業計画を文書化して共有する
必要書類・資料
  • 月次試算表(提出記録を含む)
  • 資金繰り表(実績・予定)
  • 決算説明資料
  • 事業承継計画書
  • 経営理念・経営方針の文書
  • 組織図と役割分担表
  • 取引先一覧と依存度の資料
留意点・リスク
  • 一時的に体裁を整えても、継続しなければ評価につながりません。仕組みとして定着させることが必要です。
  • 不利な情報を隠すと、発覚した際に情報開示の姿勢そのものが疑われ、これまでの積み重ねが失われます。
  • 経営者が数字を説明できないまま面談に臨むと、かえって管理水準に対する疑問を招きます。事前の準備が不可欠です。
面談トーク
決算の数字は1年に1回しか変わりませんが、銀行の見方は日々の関わり方で変わります。試算表を定期的にお出しして、決算のご報告は社長ご自身の言葉でされる。それだけで評価は変わります。
格付

格付ごとの位置づけと取扱い

格付債務者区分状態金融機関の取扱い
格付1〜2正常先(上位)業況が良好で財務内容にも特段の問題がない先のうち、上位に位置づけられる。最優遇金利の適用、担保・保証の軽減、積極的な提案営業の対象
格付3〜4正常先業況が良好で財務内容にも特段の問題がない。通常の条件で融資が可能。プロパー資金の取扱いも進む
格付5正常先(下位)財務内容に注意すべき点はあるが、返済能力は維持されている。融資は可能だが、条件面での交渉余地は限られる
格付6〜7要注意先財務内容に問題があり、今後の管理に注意を要する。新規融資は慎重。保証協会付が中心となる
格付8要管理先元本または利息の支払が3ヶ月以上延滞、または貸出条件の緩和を行っている。新規融資は原則困難。経営改善計画の策定が前提
格付9〜10破綻懸念先以下経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗が芳しくない。回収方針。抜本的な再建策が必要

格付の段階数・名称・区分の境界は金融機関ごとに異なります。上表は一般的な整理です。

視点

金融機関は決算書のどこを見ているか

着眼点読み取られる内容
勘定科目内訳明細書決算書本体より先に読まれる。役員貸付金・仮払金・関係会社債権・長期滞留債権はここで把握される。
現預金と借入金の関係現預金が月商1ヶ月分を大きく下回ると資金繰りへの懸念。逆に借入とほぼ同額の預金があれば実質無借金と評価される。
売上債権の回転期間業種平均より長い場合、不良債権の混入か押込み販売による売上の水増しが疑われる。
棚卸資産の回転期間急増した場合、滞留在庫の発生か期末在庫の過大計上(利益の捻出)が疑われる。
減価償却の状況別表十六で償却不足の有無が確認される。償却不足は実態評価で控除される。
役員報酬と役員貸付金役員報酬が高額でありながら役員貸付金が増加している場合、実質的な資金流出とみなされる。
純資産の3期推移利益の蓄積が実際に行われているかを示す。増資や資産売却益によるものかも確認される。
他行の残高推移シェアの変化として注視される。急減している行があれば理由が問われる。
資金使途と調達手段の対応運転資金を長期の証書貸付で賄っていないか、設備資金の期間が耐用年数に見合っているかが見られる。
試算表の提出状況求められる前に出しているか、継続しているかが、情報開示の姿勢として評価される。
経営者の説明能力決算の変化について経営者自身が理由を語れるかどうかが、定性評価に直結する。
計画と実績の差異説明未達そのものより、原因を把握し対応策を示せるかどうかが信頼を左右する。
用語

用語集

用語意味
信用格付金融機関が独自の基準により債務者の信用力を段階評価したもの。一般に10段階前後で、定量評価と定性評価から算定される。
債務者区分債務者の業況・財務内容・返済能力等により、正常先/要注意先(うち要管理先)/破綻懸念先/実質破綻先/破綻先に区分する分類。貸倒引当金の計上率に直結する。
定量評価決算書の数値から算定される安全性・収益性・返済能力・成長性の各指標による採点。
定性評価経営者の資質、市場動向、情報開示の姿勢、取引状況等、数値以外の要素による評価。定量評価に加減点される。
実態貸借対照表決算書の資産について実在性と時価を確かめて評価し直した貸借対照表。格付・債務者区分の出発点となる。
実質自己資本実態純資産に、返済順位が劣後する役員借入金や資本性借入金を加算した、査定上の自己資本。
債務償還年数(有利子負債−現預金)÷簡易キャッシュフロー。返済能力の配点で最も比重が大きい指標。
簡易キャッシュフロー経常利益×(1−実効税率)+減価償却費。返済原資の目安。
償却前営業利益営業利益+減価償却費。事業から生み出される資金の源泉であり、黒字か否かが債務者区分の判定要素となる。
所要運転資金売上債権+棚卸資産−仕入債務。事業を回すために恒常的に必要となる資金。正常運転資金ともいう。
短期継続融資所要運転資金に対して、期日に一括返済し同額を再度実行することを繰り返す融資形態。元金返済が発生しない。
プロパー融資信用保証協会の保証を付さず、金融機関が自らの信用リスクで行う融資。
保全担保・保証により債権が回収可能な状態にあること。保全されていない部分を信用部分という。
根抵当権の極度額根抵当権により担保される債権の上限額。借入残高が減っても自動では下がらない。
資本性借入金契約上は借入金であるが、長期の期限一括償還・業績連動型金利・法的破綻時の劣後性を備え、査定上は自己資本とみなされるもの。
DDSデット・デット・スワップ。既存の債権を資本性劣後ローンに転換する手法。
DESデット・エクイティ・スワップ。債権を現物出資して株式の発行を受け、負債を資本に振り替える手法。
実抜計画実現可能性の高い抜本的な経営再建計画。概ね3年以内に正常先となる計画であること等が要件とされる。
合実計画合理的で実現可能性の高い経営改善計画。概ね5年以内(最長10年)に正常先となる計画であること等が要件とされる。
経営者保証に関するガイドライン経営者保証の在り方を示した自主的なルール。法人と経営者の関係の区分・分離、財務基盤の強化、経営の透明性確保の3要件を掲げる。
事業性評価財務データや担保・保証に必要以上に依存せず、事業の内容や成長可能性を評価して融資判断を行う考え方。
貸出条件緩和債権金利減免、利息の支払猶予、元本返済猶予等、債務者に有利となる取決めを行った貸出金。該当すると要管理先となる。
手順

格付改善の実務チェックリスト

実行ロードマップとモニタリング計画
様 / 作成日  / 

凡例:■実態BS開示 ■科目整理 ■収益力 ■負債圧縮 ■借入構成 ■取引行 ■保全・保証 ■資本増強 ■改善計画 ■定性評価 ■期限あり

金融機関への報告カレンダー(年間)

格付は決算書の受領後に見直されるのが通例です。決算後2〜3ヶ月の時期に、実態貸借対照表を含む十分な資料を届けることが最も重要になります。

担当者別の役割分担

施策別の実行スケジュール

決算月から逆算した期限管理

モニタリング指標(毎月・四半期)

格付は年1回の見直しですが、その材料は日々蓄積されます。下表の指標を継続的に管理し、四半期ごとに金融機関と共有します。